夏の狙撃手 

夏の狙撃手
■著者鳴海章
■発行光文社文庫
■定価 762円(税別)

著者から新刊がおくられてきた。久しぶりに長い海外出張のともにとカメラバッグにおしこんだが、フランクフルトに着く前には読み終えてしまった。もったいないことをした。主人公は著者の作品の「第4の射手」にちょい役で出ていたが、この作品ではその生い立ちや変化が描かれている。その代わり「第4の射手」の主人公仁王頭がこの作品では卒配したての新米制服警官として登場している。それだけやない。「オマワリの掟」でわしといっしょにヘタレ暴走族として登場したポン友の北海道新聞のカメラマンも今度はその名のままちょい役ででていたりとなつかしさも感じられた。表紙のイラストはラストシーンのイメージだが、指先がカットされたグローブ、マズルブレーキ、右側のボルトにニコンのスコープとディテールが正確やが、実物見て描いたとしか思えん。さて本作品にもライフルが多数登場するが、やっぱりレミントンM700が著者の好みであろうか、米海兵隊でもこのM700をベースにしたM40で主人公は修行を積む。わしら射撃好きの間でもM700は人気が高く、猟友の一人信濃の新聞社に勤めるカメラマンがこれを愛用しているが、じつはM700やM40よりすごいのが本作品にもでてくるユナートルのスコープである。スコープで釘が打てるというぐらい堅牢で海兵隊仕様ともなるとかなり高額だが、現在の海兵隊の狙撃用スコープはドイツのシュミット・ウント・ベンダー製に変更になり、わしも最新のモデルを購入して、愛用している。さらに本作品では主人公が富士学校の幹部レンジャー教育課程に身分を偽り参加しているが、あれはわしも最終想定だけやが、参加したが、6日間地獄を見た。しかもわしのときと同じ伊豆半島にゴムボートで上陸、そのあと山間部を一人にも見つからず一晩移動後、通信施設襲撃とまったく同じコースである。著者が拙著「不肖・宮嶋 史上最低の作戦」を参考にしてくださっていたなら、なお光栄でる。あとはとわしが趣味の北海道の「エゾジカ狩り」も主人公とそのボスが趣味で楽しむシーンもあるが、そちらは著者が帯広在住であるから、イメージされやすかったのであろう。オウム事件をモデルにした「長官狙撃」の新興宗教団体もラストにでてきて、この「狙撃手シリーズ」全編読めば人間関係がつながるということであろう。あの映画にもなった元海兵隊狙撃兵「ボブ・リー・スワッガー」が主人公のシリーズも時代が前後しているし、狙撃手の世界はやはりドラマチックである。ただわしには到底無理や。