日経おとなのOFF 2013年1月号

日経おとなのOFF 2013年1月号
■発行日経BP社
■定価680円(税込み)

2013年の正月号が「絶対見逃せない美術展」というぐらいアカデミックな特集である。かくいうわしも一応芸術学士である。写真分野ぐらいならと日経おとなのOFF誌が選んだ今月26日から横浜美術館で開かれる写真展「ロバート・キャパ/ゲルタ・タロー 二人の写真家」の解説をさせていただき、畏れ多くも報道写真の神ロバート キャパの作品の中から8点を選ばせてもらった。それにしてこのときになって初めて気がついたが、わしはキャパの発表されたほとんどぜんぶの作品を観てきた。写真展では弟コーネル キャパがプリントしたオリジナル プリント・・・本人はもう亡くなっていたからオリジナルやないか・・・まあプリントや当時発見されたばっかのカラーも含めた地雷を踏む直前の最後のプリントまで観てきたが、キャパ最愛のゲルタの作品はほとんど観たことなかった。まあキャパが10代から40歳に亡くなるまでに対しゲルタはスペイン内戦中に亡くなったから作品が少ないということもあるが。ただゲルタはキャパ以上に日本とゆかりがある。タローは本名でなく、あの太陽の塔の故・岡本太郎氏からとったと授業で習った。当時のパリはキャパのようにナチスの迫害から逃れたりとか、世界中から食い詰めた若い芸術家がたむろしており、そこで岡本太郎氏と意気投合したキャパ、ゲルタのカップルが岡本氏の名が気に入ってつけた・・・と習った。そのスペイン内戦でゲルタは友軍の戦車にひき殺されるというどこに怒りをぶつけたらええんじゃ、みたいな悲劇の最期を迎えたが、キャパはそこで「敵弾に倒れるスペイン義勇兵」という世界を驚かせた作品をものにする、という皮肉な運命であった。なんてことは学生時代の論文やないからこれ以上解説せんので、ぜひ横浜美術展でなまでゲルタの作品にふれていただきたい。本誌は他にルネッサンスの巨人からシュール・リアリズムのフランシス・ベーコンまでまあこれでもかというぐらいアカデミックな美術展をさまざまに紹介してくれている。最後はは現在のスペイン、イタリアの紀行まで掲載されている。